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愛知県美術館所蔵作品選

高橋由一 TAKAHASHI Yuichi
1828-1894
厨房具
Kitchen Utensils
1878年頃 油彩、麻布 42.5×60.7cm
c.1878 Oil on canvas

下野国(現栃木県)佐野藩士の嫡子として江戸に生まれる。初め狩野派に学ぶが、嘉永年間(1848-54)に洋製石版画を見たのを契機に洋画に転向[一説に文久元-2年(1861-62)]。1862年に蕃所調書画学局に入所し、川上冬崖の指導を受けるかたわら、1866年にはワーグマンに師事した。1873年、私塾天絵楼を創設し、後進の指導にあたった。同時に、月例展示会を開催し、代表作《花魁図》や《鮭図》などを出品。また1880年から翌年にかけて、金刀比羅宮奉納の油彩を制作。その後、《山形市街図》など東北地方の一連の風景画を描いた。美術雑誌の発行、美術館創設の請願など、美術普及にも尽力した近代日本洋画の開拓者である。由一は1874年ころより「卑近な事物、つまり誰にでも、よく判りよいもの」(平木政次)を対象に一連の静物画を写実的に描いている。斜め上方から見下ろした構図は由一の静物画の特徴であり、まったく同一の空間設定は、1876年2月4日の天絵社月例油絵展に出品された《鱈梅花》にも見られる。複雑に重ね合わされた各種厨房具の配置方法や陰影の付け方などから既に空間や量感に対する意識を看取できるが、単独で置かれた蓮華と摺紛木との間の曖昧な関係にはっきりと窺えるように、まだ統一的な空間を捉えるには至ってない。しかし対象の真に迫ろうとする画家の鋭い気迫は、擂紛木のごつごつした樹皮やどっしりとした擂鉢の表現などによく現れている。 (H.F.)


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