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愛知県美術館所蔵作品選

戸張孤雁 TOBARI Kogan
1882-1927

煌めく嫉妬
Glittering Jealousy
1923年 ブロンズ h35.0cm
1923 Bronze

東京日本橋に生まれる。1901年絵を学ぶため渡米し、ニューヨークで荻原守衛と親友になった。1906年の帰国後洋風の写実手法による挿絵を発表し、1908年『孤雁挿画集』を刊行したが、1910年守衛の死を機に彫刻に転じ、中原悌二郎と太平洋画会彫塑部に入った。翌年守衛の遺稿を『彫刻真髄』として纏めるとともに、第4回文展に《おなご》を出品、1917年には再興日本美術院彫刻部同人となった。一方、1914年に山本鼎らと日本創作版画協会を設立し、1922年『創作版画と版画の作り方』を著すなど、創作版画の分野でも活躍した。彼の彫刻はロダン―守衛の流れを汲みながら、一瞬の動きを捉える新鮮な感覚や柔らかな肉づけ、繊細な陰影の美しさに独自性を持ち、徐々に文学性・象徴性を深めていった。東京日暮里で没。
孤雁は自分の彫刻に「重い力強さが缺けている」と自覚していたが、流動的な曲面が対象を柔らかく包み込む独特の形態感覚には、彼の素描や版画の描像とも共通の魅力があり、彫刻一般が陥りがちな外見的効果ではなく、内面からの生命感や雰囲気の表現に適していた。初期の《足芸》(1913)では運動中の一瞬の静を示したが、代表作とされるこの《煌めく嫉妬》では、人間の感情が表出する一瞬を捉えている。力が抜けたようにうなだれて坐り、わずかに身をよじって足先を掴むという微妙な動きの中に、この女性の感情―嫉妬にまつわる悲しみや怒りと、それを押し殺そうとする苦しみなど―が、彫刻表面の細やかな光の煌めきとともに放射されており、顔の表情の大胆な省略が、この個人的感情を普遍化している。(T.M.)


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