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愛知県美術館所蔵作品選

靉光 AI-MITSU
1907-1946
自顔像
Self-Portrait
1934年 グワッシュ他、紙 25.8×14.0cm
1934 Gouache on paper
広島県に生まれる。本名は石村日郎。1924年上京し、太平洋画会研究所に通い、はじめ太平洋画会展、その後一九三○年協会展などに出品した。1934年の第4回NOVA展、翌年の同展に人物像を中心とした小品群を出品。1936年からライオンの連作を始め、第6回独立展に《ライオン》2点を出品した。1938年の第8回独立展で独立美術協会賞を受賞した《目のある風景》など、この時期「シュルレアリスム的」と評される、時代状況のなかでの不安な精神状態を鋭く捉えた作品群を世に送った。1943年には麻生三郎、松本竣介らと新人画会を結成。同年から翌1944年にかけて一連の自画像を残し、応召して中国に従軍し、敗戦後に帰国をはたせず上海にて戦病死した。
この作品は、靉光が1934年から翌年にかけて制作した小品群の1点である。この時期は、彼の制作が《ライオン》の連作、そして《目のある風景》へと至る前段階にあたっており、自己の内面に深く沈潜して、そこから人間を見つめこれを造形化した特徴的な作品を集中して残している。この作品は従来《女》あるいは《女装した自画像》とも呼ばれてきたが、第4回NOVA展に出品された《自顔像》の可能性がある。実際、女装した彼の写真が残っており、この作品でも人物は画板を脚にのせ、ペンを口にあてている画家なのか、あるいは鏡を脚にのせ、口紅を差している男なのかが判然としない複雑な表現内容をもっており、彼の特異な自画像として注目される。(M.M.)


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