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愛知県美術館所蔵作品選

前田寛治 MAETA Kanji
1896-1930

褐衣婦人像
Woman in Brown Clothes
1925年 油彩、麻布 91.0×72.5cm
1925 Oil on canvas

鳥取県に生まれる。1921年、東京美術学校西洋画科卒業。在学中に藤島武二の指導を受けた。1923-25年パリに滞在。エコール・ド・パリの自由な雰囲気の中で古典主義ならびに写実主義絵画を研究。1925年、《J・C嬢の像》で帝展の特選を得て画壇に地歩を築いた。翌年、木下孝則、里見勝蔵、佐伯祐三、小島善太郎と一九三○年協会を設立。本郷湯島の洋画研究所に前田写実研究部を開設して唯物史観に基づく写実主義理論を展開し、後進の指導にあたるかたわら古典的構図の写実とフォーヴィスム的筆致の作品を発表した。1929年、《海》が帝国美術院賞を受賞。1930年、33歳の若さで東京に没した
前田寛治の渡欧作には〈婦人像〉と〈裸婦〉の二つの主要なシリーズがあるが、この作品は前者のうちの一枚で、1926年の中央美術展に出品された時には《少女》という題名が付けられていた。モデルは、《J・C嬢の像》(個人蔵)に描かれたのと同じジャックリーヌ・ジョーダンと伝えられている。褐色のモノクロームで描かれているために、緑青色と朱色のコントラストを好んだ寛治特有の色使いは殆ど見られないが、顔から首、胸にかけて典型的に見られる古典的な明暗法と円筒形の腕の形に特徴的なセザンヌの影響をはっきりと示す幾何学的に抽象化された形態描写によって確固たる実在感を生んでいる。(H.F.)


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