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愛知県美術館所蔵作品選

小出なら重 KOIDE Narashige
1887-1931

N婦人像
Portrait of the Wife
1918年 油彩、麻布 90.8×78.0cm
1918 Oil on canvas

大阪市内の製薬業の家に生まれた。1907年東京美術学校日本画科に入学し、後に洋画科に移った。卒業後、日本美術院の洋画部など出品したが、1919年の第6回二科展に《Nの家族》を出品して樗牛賞を受賞し画壇へのデビューをはたした。その後は二科展に出品を続け、1923年には二科の会員となった。これに先立つ1921年には渡欧して、自らが描く油彩の方向付けとなるものを得て帰国した。これを機会に彼の表現は、明暗の対比や形態の単純さに際だった特徴を示すようになり、静物画や裸婦像に代表される、省略と単純化のなかに濃厚な質感をもった本格的な油絵を完成させていった。1924年に鍋井克之らと大阪に信濃橋洋画研究所を設立し、後進の指導にもあたった。芦屋市の自宅で死去。
小出は1917年に天彩画塾で学んでいた和田重子と結婚した。この作品は結婚の翌年、身重な妻を描いたものである。色調はこの時期特有の暗さをたたえてはいるものの、赤いカーテンやテーブル上の花、襟巻をしてゆったりと椅子に腰掛ける重子の姿には、母性を祝福しようとする画家の精一杯の愛情が込められているようである。作者はこの時期、自らの表現を求めていわば模索の時を過ごしていたが、その作風は写実を基本としながらもタッチを重視するようになり、機築的な画面をめざしはじめていた。それは翌年の《Nの家族》で一つの頂点をむかえるが、この作品はその前段階にあたるものとして、作風の展開を考えるうえでも重要なものである。(M.M.)


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