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愛知県美術館所蔵作品選

中村 彝 NAKAMURA Tsune
1887-1924

少女裸像
Nude Gir1
1914年 油彩、麻布 80.3×65.2cm
1914 Oil on canvas

茨城県に生まれる。1906年白馬会洋画研究所に入り、翌年には太平洋画会研究所に移り中村不折や満谷国四郎の指導を受けた。彼はこの時期に中原悌二郎や鶴田吾郎など多くの友人を得て、やがて〈個性の時代〉と呼ばれる大正期を代表する画家として活動をすることとなった。彼は、結核という当時としては不治の病と闘いながら、芸術の理想を追う求道者のように制作を続け、文展や帝展に重要な作品を発表しつづけた。彼はレンブラントやルノワール、セザンヌなどを熱心に研究し、それを造形の糧として吸収しながら、対象のもつ生命感を描き出し、その本質に迫ることをめざして自己の表現を完成させていった。
この作品は新宿中村屋の創業者である相馬愛蔵、黒光夫妻の長女、相馬俊子を描いたものである。彼は少女の若々しい美しさに魅せられたのであろう、彼女を描いた作品を何点も残しているが、それらはいずれも健康で明朗なものをもっている。この作品では、その描法にルノワールの影響を見てとることもできる。しかし、ここでは生き生きとした少女の表情を印象的に描き出すために、人体とその他の部分の描き方を工夫するなど、すべてが彼自身の造形となっている。彼はやがて俊子との恋愛問題に悩むこととなるが、これは主題への深い共感と、自己の表現を追求する意欲とにささえられて到達することのできた造形であり、彼の制作を代表する作品である。(M.M.)


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