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愛知県美術館所蔵作品選

久米桂一郎 KUME Keiichir
1866-1934

秋景
Autumn Landscape
1892年 油彩、麻布 39.0×55.0cm
1892 Oil on canvas

佐賀城下八幡小路(現佐賀市)に生まれる。8歳のとき家族とともに上京し、1883年の内国勧業博覧会によって本格的な西洋画修学を志し、藤雄三に師事した。86年に渡仏し、ラファエル・コラン門下で黒田清輝を知った。7年間の留学後、95年の第4回内国勧業博覧会で黒田の《朝妝》(焼失)を巡って裸体画擁護論を発表、さらに翌年には東京美術学校に西洋画科が設けられるのに伴い、美術解剖学と考古学の講義を担当した。また黒田らと「白馬会」や文展の審査員を務めるなど面家としての活動を継続しながら、中期以降は教育家・啓蒙家としても活躍した。現存作品は著しく少ないが、外光派様式とアカデミックな方法論をもって従前の日本洋画界に新風を吹き込んだ功績は大きい。没地東京。
帰国前年の1892年、久米は8月から年末までブルターニュ地方のブレハ島に滞在した。この《秋景》は、おそらくそのときに野外制作されたものであろう。空と大地がもつ豊かな広がりの巧みな再現を支えているのは、画面を二等分する地平線と、規則正しい積藁による対角線から成る堅実な構図である。薄雲の浮かぶその大空は藤色と薄青色とを帯び、さらに右上方からの陽光によって附けられた陰影は薄紫に彩られ、久米が帰国後〈紫派〉と呼ばれた事実を裏づける。そして、刈り束ねられた麦藁のモティーフは、モネに初めて名声と富をもたらすきっかけとなった〈積み藁〉の連作や、久米白身が帰国後ほどなくして描いた代表作《夏の夕(鎌倉の景)》(東京芸術大学芸術資料館所蔵)などとの関連を想い起こさせる。(R.T.)


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