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愛知県美術館所蔵作品選

入江波光 IRIE Hak
1887-1948

南欧小景
A Scene in the Southern Europe
1923年 絹本着色 36.0×41.0cm
1923 Color on silk

京都市の生まれ。京都市立美術工芸学校から同市立絵画専門学校に進み、卒業制作《北野の裏の梅》では近代的な視覚による自然主義的な表現をみせた。その後東京帝室博物館などでの古画模写に携わり、一時期は近世風俗画への関心を深めた。1918年に母校絵画専門学校の助教授となり、翌年、一度は参加を辞退した国画創作協会の会員となったが、この頃から西欧美術への関心を強めていった。1922年京都府の命で欧州に出張し、イタリア中世あるいは初期ルネサンスのフレスコ画から改めて強い刺激を受け、帰国後暫くはその影響を色濃く反映させた作品を制作した。1928年の国画創作協会解散後は、画壇を離れて教育と古画の模写に努めた。1939年末、法隆寺金堂壁画摸写の主任の一人となり、この事業に全力を傾けた。京都で没。
波光は1922年の渡欧でイタリアのフレスコ画に強く引き付けられ、はやくも滞欧中から初期ルネサンスの絵画に触発された甘美でロマンティックな憧れに満ちた作品を残している。《南欧小景》は、この渡欧からの帰国後に描かれたものである。フレスコ画を思わせるような効果の淡く微妙な色調による抽象的な空間に、水を汲む女と一本の木、そして僅かな草が描かれている。彼は、この「水汲み」のモティーフの作品を帰国後に何点か描いているが、人物の顔や形態を示す線の確かさ、控え目な色彩表現ながらもその空間の充実ぶりなどには、このテーマに取り組んだ作者のみずみずしい初発的な感覚を見ることができ、ヨーロッパ滞在の印象も新鮮なころに描かれたものと思われる。(M.M.)


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