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愛知県美術館所蔵作品選

レイモン・デュシャン=ヴィヨン Raymond DUCHAMP-VILLON
1876-1918

恋人たち
The Lovers (Les Amants)
1913年 鉛 35.0×52.0×6.0cm
1913 Lead

フランス、ダンヴィルに生まれる。パリで医学を学んだが、病気のため学業を断念して彫刻家に転身した。アール・ヌーヴォーやロダンの影響を経て形態の単純化に向かい、1911年には細部を省略して量感を強調した《ボードレール像》を制作した。総合芸術としての建築にも関心を示し、1912年のサロン・ドートンヌに〈キュビスムの家〉の建築計画を発表。同年、兄ジャック・ヴィヨン、弟マルセル・デュシャンとともにピュトーのキュビスム集団の中心となり、〈セクション・ドール〉展に参加した。1914年の《馬》連作において、著しく抽象化された形態による連動と生命力の表現をめざしたが、第一次大戦中に腸チフスにかかり、カンヌで没した。
建築と彫刻との融合をめざしていたデュシャン=ヴィヨンは、そのひとつの方向として、壁面を装飾するレリーフという形式を選んだ。恋人を強くひきよせようとする男と、それに対して複雑な反応を示しているかに見える女の体が、奥行きの浅い空間のなかでせめぎあう凹凸の形態として一体化され、強い心理的効果をもたらしている。この作品の出発点となったのは、1907年のサロン・ドートンヌに発表されたマイヨールのレリーフ《欲望》であるとされているが、ダイナミックな抽象形態によって男女の間の性的な葛藤を表現するという狙いは、彼の弟マルセル・デュシャンが1912年に描いた一連の作品とも共通するものと言える。(H.Mu.)


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