.

愛知県美術館所蔵作品選

ヴィルヘルム・レームブルック Wilhelm LEHMBRUCK
1881-1919
立ち上がる青年
Rising Youth (Emporsteigender Jngling)
1913年 ブロンズ 226.0×76.0×56.0cm
1913 Bronze
ドイツ、デュイスブルク郊外のマイダリッヒに生まれる。デュッセルドルフの美術工芸学校を経て1901年から07年まで同市のアカデミーで学んだ。初期はベルギーのムーニエの影響もあって労働者など社会的主題の作品を制作したが、05年頃ロダンを知り、その表現を学びながら感傷的、内省的な趣きを見せ始めた。1910年に移り住んだパリではマイヨールの影響も受けたが、モジリアニ、アルテペンコ、ブランクーシといった作家たちと交流する中で、細長く引き伸ばした新しい人体造形に強い精神性を結びつけた独特の作風を確立、ドイツ表現主義を代表する彫刻家となった。19年プロイセン芸術アカデミー会員に推されたが自殺。戦争に対する苦悩と、造形と感情という芸術上の相剋のためといわれる。
レームブルックの細長い人体はまず女性像に用いられ、メランコリックな表情や、傾けた首に始まるゆったりとした動勢に適していた。対して、踏み出した左脚と胸の前で組んだ腕が大きな空間をつくるこの男性像は作者の精神的自画像といえるが、長い肢体は個人を超越した存在を感じさせ、第一次大戦直前に新しい人類共同体を夢みた芸術家たちの精神を象徴している。沈鬱な表情と指や関節などの生気が、世界を背負って高みに向かう者の侵し難い霊威を像にまとわせている。しかし大戦勃発後この青年は、四つん這いで他に頭を垂れる《戦死者たち》(1915/16)やうなだれる《坐る青年》(1916/17)などのように悲劇性を強めていくこととなった。(T.M.)


.