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愛知県美術館所蔵作品選

エミール=アントワーヌ・ブールデル Emile-Antoine BOURDELLE
1861-1929

両手のべートーヴェン
Beethoven with Two Hands
(Beethoven aux deux mains)
1908年 ブロンズ 53.0×44.0×33.0cm
1908 Bronze

フランス、モントーバンに生まれる。家業のため家具の細工彫刻をはじめ、トゥールーズの美術学校を経て1884年パリのエコール・デ・ボザールでファルギエールについたが2年で中退し、ダルーに学ぶ。1893年からロダンの助手を務め、ロダンの彫刻語法である激情的な肉付けを身につけたが、1900年《アポロンの頭部》でその影響を脱し、簡明な面と量の構成による新たな彫刻秩序を追求し始めた。1909年《弓をひくヘラクレス》で大成功を収める。直線的・直角的な形態を力強いリズム感で建築的に統合する手腕は、《ミズキエヴィッチ記念碑》(1908-29)、《アルベアール将軍記念碑》(1912-25)など多くのモニュメントに発揮されている。ロダン後のフランス彫刻の大きな指標となり、清水多嘉示ら日本の彫刻家にも影響を与えた。
1888年から死の年まで、ブールデルは40数点のベートーヴェン像を造り続けた。初期には写実的な肖像であったが、1901年頃から容貌や場面設定などに自由度が増し、ブールデルの自己投影とも思われる表現へ移っていった。感情や精神が堅固かつ壮大な構成感によって凝縮され高められるという点で、二人の芸術には共通性が感じられよう。この作品はロダンのもとを離れた年のもので、顔と両手の3つの塊を四角い石柱から彫り出されたように表して、その構成の建築性が顕著である。瞑想的な表情の顔を包み込む背景の大きな量塊は、内面世界の広がりを感じさせるが、対して前方の両手はべートーヴェンの肖像画などに比べてかなり大きく、力強さと豊かな表情を持ち、霊感を実際の音や形にうつす芸術家の象徴となっている。(T.M.)


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