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愛知県美術館所蔵作品選

メダルド・ロッソ Medardo ROSSO
1858-1928

病める子
Sick Child (Bambino malato)
1893年 石膏・ロウ 27.0×26.0×18.0cm
1893 Wax over plaster

イタリア、トリノに生まれる。1881年ミラノの美術学校に入ったが、保守的な教育に反抗し翌年放校。ミラノを中心とした反アカデミックな芸術運動〈スカピリアトゥーラ〉の影響下、当時主流の神話や英雄にかわって貧しい人々を題材とし、さらに人物や群像とその背景を丸ごと彫刻化したが、大胆な省略やタッチの凹凸による光の散乱など、彫刻手法上も大きな革新を行った。1884年パリのダルーのもとで一時働いたが、1889年パリ万国博への出品を機にロダンと知り合い影響を与え合った。1900年パリに移り、以後フランスで活動。ロウを用いて彫刻と周囲の空間の融和をはかったり、逆遠近法によって作品が見られる視点を特定するなど、彫刻表現の可能性を拡大し、イタリア未来派のボッチョーニからも賛美された。ミラノで没。
ロッソ作品の主題は約40種だが、その多くに幾つかのヴァージョンがある。この《病める子》の原作は1889年ロッソが一時入院した折りに造られている。彼の作風には、同時期の《病院の病める男》のようにタッチを生かし、光が散乱する溶岩のような形態の中に対象を融合させるものと、この作品のように、滑らかな凹凸の内に光と陰影を溶け合わせるものとがある。ロウの使用は、前者ではその柔軟性と色彩感が、後者では光を半ば透過させる性質が生かされている。傾けた顔面の下半が繊細な調子の中で闇と空気にとけ込んでいくさまは、題材の文学的な情感とも調和しているといえるが、一方この単純化された形態の新鮮さは、ブランクーシの《眠れるミューズ》(1910)などの20世紀彫刻にも影響を与えることとなった。(T.M.)


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