事業報告書表紙

年間スケジュール
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コラボアート
「縁」−マーキュリー空間への誘い
Collabo-Art "En"−Invitation to Mercury Space

目 次
Human
Collaboration '98

コラボアート「縁」
制作ノート
公演スケジュール
メルボルンフェス

イベントーク
「異形としての身体」

アートフィルムフェス

ワイズマン映画祭

オリジナル映像作品
「うつしみ」

シュタンゲ
ダンスワークショップ

ユーリ・ン ダンス公演

現代音楽家
三輪眞弘講演会

現代音楽家
R・アシュリー講演会

パブリックアート

ハイビジョン・オペラ

 

Art Around Project

「舟の丘、水の舞台」

コラボアート「環」

コラボアート「縁」

3年間を振り返って

1998年10月20日(火) 午後4時〜午後8時 愛知芸術文化センター全館

総合演出:山口勝弘 映像:IKIF 音楽:今堀恒雄 振付:米井澄江、スー・ヒーリー 演奏:今堀恒雄(ギター)、小田島亨(サックス)、菊地成孔(サックス)、サム・ベネット(パーカッション) ダンス:スー・ヒーリー、ニコル・ジョンストン、ミシェル・ヘブン、ジェニファー・ニューマン=プレストン、サリー・スミス、内田香、鹿島聖子、軽部裕美、山本美樹子、尾関由三子、榊原有佳子、田中舞、アンサンブル・ダンサーズ 技術統括・照明デザイン:児玉道久 音響デザイン:小林高治 衣裳:宮村泉 舞台製作:愛知県舞台設備管理事業協同組合 舞台監督:遠藤圭介 映写:IKIF、光響社 撮影:IKIF、東海ビデオ プロデューサー:藤井明子(統括、音楽)、越後谷卓司(映像)、唐津絵理(舞踊)、アンドリュー・マーティン(ヴィクトリアン・アーツセンター)

主催:愛知芸術文化センター、愛知県文化振興事業団、ヴィクトリアン・アーツセンター
企画制作:愛知県文化情報センター
助成:財団法人 地域創造(ジャンボ宝くじ助成事業)、オーストラリアン・カウンシル
機材協力:日本ビクター株式会社

「Art Around project(AAP)」の最終回となる第3回「コラボアート『縁』」では、単に劇場から飛び出して公演を行うだけではなく、様々なメディアと手法を用いることによって複合文化施設に相応しい、これまでになかった新しいコラボレーションを創造しようと試みた。具体的にはまず、この催しを理解し楽しむためのヒントが得られるシンポジウムから催しがスタートし、パフォーマンスとしては、美術館で開催中の「アルトゥング展」と関連させたダンス&音楽などが加わった。また、2階フォーラム1にはアーティストを紹介するブース、「ステーション」を設置し、展示的側面を強調するとともに、長時間行われる公演時間中、観客の寄り所として機能するようにした。さらに、愛知芸術文化センターのホームページ上に中継映像を流し、インターネットを通じて会場を訪れることのできない観客にも催しの様子が紹介された。3回目ということで、他に例のないこの催しもある程度定着した感があり、アーティストもスタッフ側もそして観客も、利点・難点を踏まえた上で取り組むことができ、その上で新しい可能性に挑戦したり、楽しんだりすることができたといえよう。

作品のタイトル「縁」は、このコラボレーションを通じて人と人、アーティストと観客、あるいは日本とオーストラリアの出会いから、新しいつながりが始まってほしいという意図を示したもので、演出の山口勝弘によって命名された。また、作品の創作モチーフは"マーキュリー"(水銀)である。第1回から継続する「水」のイメージに、金属の粒子としての自立性、飛び散った瞬間に小さな球となって転がる敏捷性などのイメージが加わった。マーキュリーには水星という意味もあり、その守護神ヘルメスにつながる知的で軽快なイメージも備えている。催しはそれを反映し、あたかもマーキュリーが愛知芸術文化センターの空間で凝縮・分裂を繰り返しながら行き交うように、パフォーマンスが連鎖しゆっくりと流動して行くことになった。公演会場は12階から次第に下に移動し、屋外庭園、美術館ロビー、吹き抜け、通路などそれぞれの空間が持つ特性を活かしたダンスと音楽が繰り広げられた。また、パフォーマンスの流れを一方向とすることにより、昨年のような複雑さを少なくし、観客が参加しやすくなった。その分、使用空間は12階屋上庭園から地下2階のアートスペースXおよび通路まで、文字通り全館に広がった。

一方、地下のフォーラム2では、既存のマルチビジョンに加えて、ビデオプロジェクター、モニター、16ミリフィルム映写機等が用いられ、パフォーマンスと平行して映像空間が形成された。ここにはパフォーマンスの同時中継やリハーサル時の映像を加工したアニメーションなどが次々と映し出され、ダンサーやミュージシャンがその空間を訪れてコラボレーションを行うシーンも設けられた。

アーティストは、その多くが昨年より継続参加となった。オーストラリア・メルボルンのヴィクトリアン・アーツ・センターからもスー・ヒーリーほかが継続参加。ヒーリーは名古屋への二度目の参加を「第2の旅」という作品に仕立てた。昨年この催しを通じて初めて出会った異ジャンルのアーティストが、今年は互いの表現の特徴を知った上でコラボレーションの提案を行うなど、コラボレーションを深めて行くことが出来た。また、舞台とは異なる広く複雑な空間に対しても、難点を知った上でまだ行っていない方法を模索するなど、積極的な取り組みが行われた。

観客は、昨年同様パフォーマンスの流れに乗って、場所を移動しながら鑑賞した。スタートのシンポジウムの時点で、早くも300人を越える観客が集まり、ダンスの様子が見えないなどの声も聞かれたが、多くの観客が、センター全体を包む祝祭的な雰囲気を体感し、他の催しでは味わうことのできない時空間を楽しんだ。

なお、公演後その一部が「メルボルン国際フェスティバル」に参加した。オーストラリアから参加したダンサーとともに、日本人ダンサーと振付家が招聘され「メルボルン国際フェスティバル」で、当センターでの公演をもとにしたダンスを制作し、公演を行った。映像および音楽については、昨年のものも合わせてビデオやテープによって一部が使用され、全ての催しのフィナーレに相応しい公演となった。また、映像を担当したIKIFが、公演の記録映像をもとにした映像作品を制作した。
(藤井明子)

. 写真:南部辰雄