映画に代表される動きをともなった映像表現は、1895年、フランスのリュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」が一般公開されたことを基点にするものといえるでしょう。その後映画は、劇映画やドキュメンタリー、実験映画といったジャンルを派生させつつ、これらジャンル固有の表現を深化させることで、進展してきました。そして現在、映画生誕から110年以上の年月が経過し、映像表現はまた大きな転換の時を迎えつつあるように思えます。
1990年代から映画の制作現場に導入されるようになったデジタル・ビデオは、簡便かつ安価に、高画質の映像の撮影を可能にしました。当初、機材面における変化として受け止められていたデジタル・ビデオは、実のところ、映像表現そのものの有り様に大きな変化をもたらすものであったのです。フィルム時代には習熟した技能によってのみ生み出すことが可能であった、長時間切れ目なく運動を捉える長廻し撮影が、デジタル・ビデオ・カメラの登場により、一般家庭でも可能な表現へと変わってしまったことは、その一例といえるでしょう。
こうした状況を踏まえつつ、今年の「アートフィルム・フェスティバル」では、アラン・レネ、ジャン・ルーシュ、クリス・マルケルらの作品により、ドキュメンタリーが事実の記録というよりも、現実を意識的に再構成したものであることを私たちに改めて認識させる〈フランス・ドキュメンタリーの精華〉、アーティストがビデオという当時のニュー・メディアに意欲的に取りくんだ動向として重要な、1960~70年代の初期ビデオ・アートの意義を再考する〈Vital Signals(ヴァイタル・シグナル) 日米初期ビデオ・アート作品集〉や、ホーム・ビデオも含むビデオ表現の現在を反映した〈「東京ビデオフェスティバル」セレクション〉(※1)、デジタル映像の浸透が制作環境を活性化しているインディペンデント系映像作品にフォーカスした〈自主制作映画の現在〉、短編という形式が持つ可能性がアニメーションから風刺的ニュアンスの実験映画まで、多様な作品を生み出している〈フランス発!新世代ショートフィルム〉など多彩なプログラムから、映像表現の混沌としつつも豊かな、今日的な状況を照らし出すことを試みます。
また愛知芸術文化センターが、“身体”をテーマに毎年一本のペースで継続している映像作品の制作事業「オリジナル映像作品」の最新第18弾・寺嶋真里『アリスが落ちた穴の中 Dark Märchen Show!!』(2009年)の初公開も行います。19世紀イギリス的美意識を独自に先鋭化させた、自ら“ヴィクトリアン・アンダーグラウンド”と呼ぶ公演で知られるパフォーマンス・ユニットRose de Reficul et Guiggles(ロウズ ド レフィクァル エ ギグルス)と、少女趣味的耽美性と怪奇・幻想的志向を併せ持つ寺嶋がコラボレートし、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』(1865年)を独自に読み替えた注目の作品です。
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エンドリック・デュソリエ
『オブラス』 2004年

シモーネ・マッシ
『犬たちの記憶』 2006年

クロード・シャボ
『一瞬間』 2006年

エドゥアール・サリエ
『エンパイア』 2005年
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