新鮮な取り合わせが面白い!
オルガン・コンサート2題

 愛知県芸術劇場コンサートホールのオルガンを使った、2004年後半の2つの演奏会がオルガンと歌、オルガンとお話の新鮮な組み合わせで、ファンの注目を集めた。どちらも質の高いコンサートとして定評のある、愛知県文化振興事業団主催のコンサートシリーズ「音楽への扉」に含まれるだけに、内容も充実していた。
 ひとつは「オペラ・フォーエヴァー」シリーズの第2回公演『オルガンとともに聴くオペラ・アリア』(10月16日)。オペラ歌手の演奏会では伴奏役は普通、オーケストラかピアノだ。オルガン伴奏というのは大変に珍しい。オペラ・ファンで埋まった客席からは「こういう取り合わせも面白い」の声も。
 この日はウィーン・フォルクスオーパーの専属として活躍する実力派のソプラノ中嶋彰子が第1部でヘンデル、モーツァルトの歌劇のアリア、休憩後の第2部ではイタリア歌劇を代表する作曲家ヴェルデイ、プッチーニの名作「オテロ」や「トゥーランドット」からのアリアなどを取り上げ、悲劇のヒロインたちの心情を情感たっぷりに表現した。
 その中嶋の歌唱をオルガンの多彩な音色で見事に盛り上げたのがヨーロッパでの活躍も目覚しい中堅オルガニストの土橋薫だ。
 土橋が単なる伴奏役に留まらなかったのはプログラムにオルガン・ソロ作品が2曲含まれていたことからも明らかだ。モーツァルトの隠れた名作「自動オルガンのためのアンダンテ」とヴェルディの歌劇「アイーダ」からの名高い大行進曲で、自らオルガン用に編曲した勇壮な大行進曲において、土橋はオーケストラにも匹敵する豪快華麗な演奏によって客席を興奮の渦に巻き込んだ。
 このコンサートは2人の対話を挟んで進められ、中嶋が「ヨーロッパの歌劇場のテノール歌手は割りと背の低い人が多く、恋人役のソプラノが長身だと釣り合いが取れない。ところが、小柄な私が相手と分かると、途端に安心したような、うれしそうな顔をする」といったエピソードを紹介。その軽妙なやり取りに会場は寛いだ雰囲気に包まれていた。
 もうひとつは12月18日(土)午後2時開演の「Xmasはオルガンだ!V」。クリスマス前恒例のオルガン・スペシャル・シリーズで今回が3回目。横浜みなとみらいホールのホール・オルガニストの地位にある三浦はつみが出演した。
 オルガンとなれば、やっぱりバッハというわけで、プログラムの前半は有名な「主よ、人の望みの喜びよ」をはじめとするセバスティアン・バッハの作品など、本格的なオルガン曲が置かれた。しかし、後半は詩人で絵本作家としても知られる木坂涼創作の「オルガンを仲立ちにした村人と異郷人との交流の物語」を三浦が朗読し、それに合わせて弟子の渋澤久美がオルガンで即興演奏するという趣向が目玉。書き下ろしの心温まる物語、朗読、オルガン演奏の取り合わせが斬新だった。
 さらに、「きよしこの夜」を観客がオルガンと一緒に歌ったり、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」から『こんぺいとうの踊り』と『花のワルツ』を三浦が渋澤と連弾したりで、客席と出演者が一体となって週末の午後を楽しんでいた。
 ここのパイプオルガンは93のストップ、パイプ数6,883本と、日本でも最大級の規模を持つ。この自慢のオルガンを使った演奏会は事業団主催のものだけで一番多い年には7回を数えたこともあった。最近それが減ってきているのは惜しい。「宝の持ち腐れ」では勿体ない。この"楽器の王者"、どんどん活用してほしいものだ。

早川立大(はやかわ・たつひろ)(音楽ジャーナリスト)