充実した舞台に釘付け

「オペラ・フォーエヴァー」スタート

 オペラの魅力をいろいろな方面からファンに味わってもらおうと企画された「オペラ・フォーエヴァー」シリーズが好調なスタートを切った。
 このシリーズは愛知県文化振興事業団が6年前から取りかかった「音楽への扉」の一環で、オペラ・シリーズとしては3年目。2002年度「オペラは声だ!」、2003年度「オペラはドラマだ!」の後を受けて、4回にわたりオペラの永遠の素晴らしさをたっぷりと楽しめるように並べられた。
 第1回は“VIVA!ヴォーチェ”(9月11日)。「声って、とっとも す・て・き」というところか。イタリア・オペラの名作中の名作、ヴェルディ作曲の『リゴレット』が取り上げられた。配役はヒロインのジルダに国際コンクールに入賞歴を持つ若手ソプラノ歌手の森麻季、ジルダを誘惑する女たらしのマントヴァ公爵にイタリア・オペラを得意とするテノールの村上敏明、ジルダの父親リゴレット役にバリトンの蓮井求道、殺し屋スパラフチーレにバスの松下雅人ら、実力派の面々だ。
 伴奏が経験豊かな大勝秀也指揮の名古屋フィルハーモニー交響楽団。演出は松本重孝が担当した。
 会場は愛知芸術文化センターのコンサートホール。演奏会形式の上演とあって、オペラ舞台特有の書き割りや装置こそなかったけれど、全員が黒を基調とした衣装を着、ストーリーの暗い悲劇的な結末を暗示する。舞台上で演奏するオーケストラのメンバーも黒に統一される徹底ぶりだ。ただ、誘惑者マントヴァ公爵はピンクのシャツ、ジルダは純白のドレスで、それぞれの性格を表現した。また、アリアや2重唱が単独で独立して歌われるのではなく、3重唱や4重唱を含む場面全体がとおして演奏され、オペラを見ている雰囲気に浸れるよう工夫されていた。
 歌手陣はいずれも立派な出来映えで、会場の盛大な拍手を浴びていた。マントヴァ公爵役の村上が第1幕の最初のアリア「あれか、これか」を綺麗だが細い、迫力を欠く声で歌った時には「おやおや」とため息が出たが、徐々に調子を上げ、名高い「女心の歌」では艶やかな美声をいっぱいに響かせた。こういう歌手の声の変化が聞き取れるのもオペラ観劇の大きな楽しみのひとつだ。ただ、ナレーション役の過剰な表現が気にはなった。
 2回目は“オルガンとともに聴くオペラ・アリア“。ヘンデルやモーツァルト、プッチーニらが書いたソプラノのための美しいアリアを珍しいオルガンの伴奏で披露(10月16日)。
 このシリーズの特色は毎回、土曜日の昼下がりの1時半から行われることで(第1回のみ午後4時開演)、夜には出にくいお年寄りが誘い合わせて来ている姿が目に付く。また、4回通しのプレミアムシートがS席でも1万円とあって、「オペラ1回分以下の料金で4回も“さわり”を楽しめるのはありがたい」(60歳代男性)。オペラ・ファン層の開拓を目指す事業団の地道な努力が実りつつあるようだ。
 残る2回は将来有望な若手歌手たちが登場する“オペラの新星発見“(11月20日)、日本を代表するテノールの市原多朗が名手森島英子のピアノ伴奏で歌う“オペラに魅せられて“(2005年1月15日)。期待したい。

早川 立大(はやかわ・たつひろ)(音楽ジャーナリスト)