Event Talk Part .11
JAPAN LIVE MOVIE
MI・TA・RI!

2003年1月17日(金)
愛知県芸術劇場小ホール

 「身体」をキー・ワードに、様々な芸術の領域を横断的に取り上げてきた、愛知県文化情報センターの企画「イベントーク」。Part.11となる今回は、映画に生演奏と歌、語りが加わった独自の形式で、作品の生成に生命の誕生が重ね合わさられた内容を持つ、原將人+MAORIの新作『MI・TA・RI!』を上映。音楽に箏(八木美知依、高橋弘子、角野由佳)とタブラ(吉見征樹)を、またトーク・ゲストに画家・岩井康頼を迎えた、オリジナルの構成で上演した。
 ライブ演奏によるこの映画は、上映会場ごとに音楽が異なることも大きな特色の一つである。それは旅の行程を捉えたロード・ムービーであるこの作品が、様々な場所で上映されるたびに異なる共演者と出会い、上映の場においてまた新たに作品が生成されるという、開かれた可能性を持っていることでもある。多彩な奏法を用いつつ、伝統的な邦楽のイメージを良い意味で裏切る箏と、時に重厚で、また時にユーモラスな、幅広い音色を紡ぎ出したタブラによる音楽は、『MI・TA・RI!』にこれまでにない新たな表情を付け加えたといって過言ではないだろう。
 三面マルチ映像によるライブ上映というこの作品のスタイルは、今回の公演で初めてこれに触れる者にとっては、少なからず驚きを持って受け止められたようだ。しかし、そうした観客が、戸惑いつつも、徐々にその独自の世界に引き込まれ、魅了されていった様子がうかがえることは、この映像と音楽の、そして音楽家どうしのコラボレートが、緊張感のある高いテンションでなされていたことを示していよう。エンディングで使用した照明やミラー・ボールの効果は、小ホールという劇場の空間性を考慮した演出であったが、通常の映画館とは異なる空間において、映像のコラボレーションを行うという点で有効に作用し、成功を収めたといえる。観客の中で、8mmフィルムで映画を撮ろうとする若者たちが、この映画の斬新なスタイルに触れ、大いに勇気づけられた様子だったことは印象深い。
 上映後のトーク・ショーでは、岩井康 が、MAORIと原はこの作品で巫女の役割を果たしているという、彼が住む青森の風土を背景にした、独特の解釈を提示し会場を沸かせた。ライブ上映という形式による身体の関与のみならず、原は撮影の現場で起こる様々な出来事を、身体で受け止め、映像を紡ぎ出している、という指摘は、本質的には虚像ともいえる映像が、いかに身体性を獲得するかという問題に、きわめて示唆的であった。

【 T.E.】

愛知県文化情報センター「第1回アサヒビール芸術賞」受賞!

 愛知県文化情報センターは、2003年3月「第1回アサヒビール芸術賞」を受賞いたしました。自主企画として、"卓越したソフト開発と、その幅広い展開は高く評価できる。芸術の各分野における先駆的な活動に積極的に取り組んでいることは、自治体の取り組む活動としては、極めて貴重で特筆に価する。"という受賞理由は、本公演を含む、これまでに行われたすべての企画事業への評価ともいえるでしょう。ここに、これまで愛知芸術文化センターの企画に参加いただいたアーティストを始め関係者の皆様、会場を訪れていただいた観客の皆様に、記して感謝申し上げます。

Photo : Mamoru Sakakura