フォーヴィスムと日本近代洋画

マティス、ドランを中心とする、フランスの若い画家たちの小さなグループから誕生したフォーヴィスム。1905年から1907年までと活動自体は短命でしたが、その余波はただちに世界各地に広まり、20世紀の絵画に最初の革命をもたらしました。彼らは純粋な色彩による絵画の構築をめざし、ほぼ一世紀を経た今日も、その作品のみじみずしさは失われていません。

日本の近代洋画は、ヨーロッパ絵画のさまざまな傾向を取り入れながら展開しました。なかでもフォーヴィスムの影響はもっとも広範囲に及んだとされています。具体的な例をあげれば、1912年のフュウザン会に参加した青年画家たちの作品の一部、また1920年代から30年代にかけて隆盛し、しばしば「日本的フォーヴ」と呼ばれた主観的な表現様式、さらに1930年代以降の「日本的油絵」、すなわち日本的な性格をはっきり主張する絵画の形成など、フォーヴィスムは日本の近代洋画の中に確実に浸透していったと思われます。

しかし、ヨーロッパの諸傾向のなかで、とりわけフォーヴィスムが日本に受け入れられたのはなぜか。その影響の実態はどういうものであったか。あるいは日本の画家たちはフォーヴィスムのどの面を受け入れて、「日本的絵画」を形成していったのか。これらいくつかの問題は、まだ十分明らかにされてはいません。

この展覧会ではこれらの問題をあらためて考えるため、油彩画・約180点を展示します。前半部分では、20世紀絵画の出発点としてのフォーヴィスムの意義を見直し、次いでそれがドイツ表現主義に及ぼした影響と、フォーヴの画家たちのその後の展開を示します。また後半部分では、日本におけるフォーヴィスムの受容と、その影響を受けた日本近代洋画の独自の展開をふりかえります。

 

アンリ・マティス アンドレ・ドラン モーリス・ド・ヴラマンク ラウル・デュフイ ジョルジュ・ブラック ケース・ヴァン・ドンゲン アルベール・マルケ オトン・フリエス ヴァシリー・カンディンスキー アレクセイ・フォン・ヤウレンスキー エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー エーリッヒ・ヘッケル マックス・ペヒシュタイン カール・シュミット=ロットルフ 梅原龍三郎 中村 彝 萬 鐡五郎 岸田劉生 木村 荘八 鈴木金平 中川紀元 児島善三郎 里見勝蔵 佐伯祐三 熊谷守一 三岸好太郎 長谷川利行 小出楢重

  

10月30日(金)〜12月20日(日)

愛知県美術館

主催=愛知県美術館

企画協力=東京国立近代美術館/京都国立近代美術館

〈記念講演会〉

会場=芸術文化センター12階スペースA

11月7日(土)13:30〜 高階秀爾(国立西洋美術館館長)/ドナルド・マッカラム(カリフォルニア大学教授)

11月21日(土)13:30〜 陰里鉄郎(三重県立美術館館長)/馬渕明子(青山学院女子短期大学助教授)